2025年12月10日
Ken Suzuki
技術

【2025年12月版】NVIDIA Isaac Sim 環境構築の記録 (Issac Sim 5.1.0 + ROS2 w/ Win 11 Pro)

2025年12月に行った、Windows 11 Pro上でのNVIDIA Isaac Simの環境構築手順の記録です。

Isaac SimROS2Omniverse環境設定
【2025年12月版】NVIDIA Isaac Sim 環境構築の記録 (Issac Sim 5.1.0 + ROS2 w/ Win 11 Pro)

1. はじめに

この記事は、私が2025年12月にNVIDIAのロボティクスシミュレーションプラットフォーム「Isaac Sim」の開発環境をWindows 11 Pro上に構築した際の、個人的な作業記録です。

ロボットアームの制御からAIのトレーニングまで、Isaac Simは非常に多機能ですが、その分、環境構築には多くのステップが必要でした。将来、自分自身が環境を再構築したり、同様のセットアップを行う方の参考になったりすればと思い、手順を記録として残しておきます。


2. 私の構築環境

私が今回シミュレーション環境を構築したPCのスペックは以下の通りです。

  • OS: Windows 11 Pro
  • GPU: NVIDIA RTX 5090 32GB GDDR7
  • CPU: AMD Ryzen 9 9950X3D 4.3 5.7GHz
  • メモリ: 64GB DDR5 6000
  • 主要ソフトウェア: NVIDIA Isaac Sim

3. 環境構築の手順

ステップ1:OSとWSLの初期設定

まず、Isaac Simを動作させるための土台となるOS環境を以下のように整えました。

1. NVIDIA Appのインストールとドライバ更新

NVIDIAの公式サイトから「NVIDIA App」をダウンロード(バージョン11.0.2.337 2025年12月現在)し、インストールしました。これにより、GPUドライバを簡単に最新の状態に保つことができます。

NVIDIA App のダウンロードページが表示されたブラウザ画面。ページ上部にNVIDIA Appのロゴとタイトル、その下にダウンロードボタンが配置されている。画面にはNVIDIA App バージョン1.0.2.337の説明文とシステム要件が記載されており、Windowsデスクトップの一般的なブラウザ環境で表示されている

インストール中、ドライバーの種類(Game Ready DriverかNVIDIA Studio Driver)を選ぶように聞かれました。ゲームをするわけではないので、NVIDIA Studio Driverを選びました。

NVIDIA Appのドライバー選択画面。Game Ready DriverとNVIDIA Studio Driverの2つのオプションが表示されており、NVIDIA Studio Driverが選択されている状態。各ドライバーの説明とともにインストールオプションが示されている

インストール後、NVIDIA Appを起動し、最新のドライバをインストールしました。また、パフォーマンス向上のため、設定からシェーダーキャッシュサイズを「10GB」に設定しました。

NVIDIA Appの設定画面でシェーダーキャッシュサイズを10GBに設定している様子。設定メニューが開かれており、シェーダーキャッシュのサイズ選択ドロップダウンメニューで10GBが選択されている状態

2. Windows Updateの実行

システムの安定性とセキュリティのため、利用可能なすべてのWindows Updateを適用しました。

3. WSL2 (Windows Subsystem for Linux 2) のインストール

Isaac Simと連携させるロボットOS「ROS2」を動作させるため、WSL2をインストールしました。

コマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行しました。

> wsl --install

コマンドプロンプトでwsl --installコマンドを実行した結果の画面。WSLのインストール処理が開始され、進行状況やインストール中のメッセージが表示されている状態。黒いコマンドプロンプト画面に白い文字でWSLのセットアップ情報が出力されている

インストール完了後、PCを再起動し、管理者権限で再度コマンドプロンプトを開きました。

管理者権限で開かれたコマンドプロンプト画面。タイトルバーに「管理者:コマンドプロンプト」と表示され、管理者権限で実行されていることを示している。黒い背景に白い文字でプロンプトが表示されている状態

WSLのデフォルトバージョンを2に設定し、ROS2 Humbleと相性の良いUbuntu 22.04をインストールしました。途中、Ubuntuのユーザー名とパスワードを設定しました。

> wsl --set-default-version 2
> wsl --install -d Ubuntu-22.04

Ubuntu 22.04のWSLインストール画面。コマンドプロンプトでUbuntu-22.04のダウンロードとインストール進行状況が表示されており、初期セットアップとしてユーザー名とパスワードの設定を求められている状態。ターミナルにUbuntuのロゴとインストール完了メッセージが表示されている

ステップ2:NVIDIA Isaac Simのインストール

次に、Isaac Sim本体をインストールしました。

1. CUDAバージョンの確認

コマンドプロンプトでnvidia-smiコマンドを実行し、Isaac Simと互換性のあるCUDAバージョンがインストールされていることを確認しました。(このコマンドは先ほどのNVIDIA Appのインストールで同梱されています)

> nvidia-smi

nvidia-smiコマンドの実行結果画面。コマンドプロンプトでGPUの詳細情報が表示されており、NVIDIA RTX 5090のドライバーバージョン、CUDAバージョン、GPU使用状況、メモリ使用量などのシステム情報が一覧表で表示されている状態

2. Isaac Simのダウンロード

NVIDIA Isaac Simの公式サイトから、以下のコンポーネントをダウンロードしました。

  • Isaac Sim 本体 バージョン5.1.0
  • Compatibility Checker (互換性チェッカー)
  • Isaac Sim Assets (サンプルアセット)
  • Isaac Sim WebRTC Streaming Client (任意)

Isaac Simの公式ダウンロードページ。NVIDIA Omniverseサイト内でIsaac Simのダウンロードオプションが表示されており、本体、互換性チェッカー、アセット、WebRTCクライアントなど複数のコンポーネントのダウンロードリンクが一覧で配置されている状態

3. 互換性チェッカーの実行

解凍したフォルダ内にあるissac-sim.compatibility_check.batを実行し、使用しているPCがIsaac Simの動作要件を満たしているか確認しました。

解凍時の注意:Path too longエラー
ダウンロードしたzipファイルを解凍する際に、`Error 0x80010135: Path too long` というエラーが発生することがありました。 これはファイルパスが長すぎることが原因のため、私の場合は `C:\IsaacSim5.1.0` のように、短いパス名のフォルダに解凍することで回避しました。レジストリで調整することもできるようです。

Isaac Simの互換性チェッカーファイルの場所を示すWindowsエクスプローラー画面。解凍されたIsaac Simフォルダ内で、issac-sim.compatibility_check.batファイルがハイライトされており、その他の関連ファイルやフォルダと一緒に表示されている状態

それぞれ特に問題なく、このまま進めてよいことがわかりました。

Isaac Simの互換性チェッカー実行結果画面。コマンドプロンプト上でissac-sim.compatibility_check.batを実行した後の結果が表示されており、「SUCCESS」メッセージとともにシステム要件の検証が完了したことを示している。各項目のチェック結果が一覧で表示されている状態

4. シンボリックリンクの設定

チュートリアルなどで必要となるシンボリックリンクを作成するため、post_install.batを実行しました。

Isaac Simのpost_install.batスクリプトの実行画面。Windowsエクスプローラーでpost_install.batファイルが選択されている状態

5. Isaac Simの起動

isaac-sim.selector.batをダブルクリックして起動ランチャーを開きました。

Isaac Simのセレクターファイルの場所を示すWindowsエクスプローラー画面。Isaac Simがインストールされたフォルダ内でisaac-sim.selector.batファイルがハイライトされており、その他のIsaac Sim関連ファイルと一緒に表示されている状態。このファイルをダブルクリックしてIsaac Simランチャーを起動する

"isaac-sim"を選択し、「Start」をクリックすると、Isaac Simが起動します。初回起動は少し時間がかかりました。

Isaac Simのアプリケーションセレクター画面。左側にはIsaac Simのロゴとアプリケーションリストが表示されており、「isaac-sim」が選択された状態。右側にはアプリケーションの詳細情報とStartボタンが配置されている。ダークテーマのインターフェースでNVIDIA Omniverseのランチャーデザインが採用されている

無事に起動すると、以下のような画面が表示されました。

NVIDIA Isaac Simのメイン画面。上部にメニューバーとツールバーが配置され、中央には3Dビューポートが表示されている。画面左側にはContent Browserパネル、右側にはProperty Panelが配置されたダークテーマのインターフェース。ビューポート内にはデフォルトのグリッド表示とライティングが設定されており、3Dシミュレーション環境の準備が完了した状態

ステップ3:開発ツールのセットアップ

シミュレーション開発を快適に進めるため、以下のツールをインストールしました。

  • Visual Studio 2022 Build Tools: ROS2のカスタムノード等のビルドに必要でした。

    > winget install --id=Microsoft.VisualStudio.2022.BuildTools -e
    

    Visual Studio 2022 Build Toolsのインストール画面。Microsoftの公式インストーラーでワークロード選択画面が表示されており、C++によるデスクトップ開発、MSBuild Tools、CMakeツールなどの開発ツールコンポーネントが一覧で表示されている。ROS2開発に必要なC++ビルドツールチェーンをセットアップするためのインストール構成画面

  • Git for Windows: ソースコードのバージョン管理に使います。 Git for Windowsのインストールウィザード画面。Gitのロゴと「Git for Windows Setup」のタイトルが表示され、インストールオプションの選択画面が開かれている。バージョン管理システムとしてのGitをWindows環境で使用するためのセットアップ画面で、インストール先フォルダの指定やコンポーネント選択などの設定項目が表示されている

  • Miniconda: プロジェクトごとに独立したPython環境を管理するために導入しました。ダウンロードにはアカウントを作成する必要がありました。 Minicondaのインストールウィザード画面。Anacondaのロゴと「Miniconda3 Setup」のタイトルが表示され、インストール設定画面が開かれている。プロジェクト別のPython環境管理ツールとしてのMinicondaをWindowsにインストールするためのセットアップ画面で、インストール先の選択やパッケージ管理の設定オプションが表示されている

  • Docker Desktop: 再現性の高い環境構築のためにWSL2をバックエンドとして使用する設定でインストールしました。 Docker Desktopの設定画面でWSL2をコンテナバックエンドとして使用する設定画面。左側にSettingsメニューが表示され、右側にはGeneral設定タブが開かれている。「Use the WSL 2 based engine」のチェックボックスが有効になっており、WSL2をDockerのコンテナランタイムとして使用する設定が確認できる状態

  • Visual Studio Code: メインのエディタとして利用し、以下の拡張機能をセットアップしました。

    • Python (Microsoft)
    • Pylance
    • Docker
    • GitLens
    • YAML
    • URDF Viewer Visual Studio Codeのインストールウィザード画面。VS Codeのロゴと「Visual Studio Code Setup」のタイトルが表示され、インストール設定画面が開かれている。統合開発環境としてのVS CodeをWindowsにセットアップするための画面で、インストールオプションやエディタ設定の選択項目が表示されている状態

ステップ4 (推奨): 3D/CAD関連ツール

3Dモデルの作成や編集、CADデータの扱いのために、以下のツールもインストールしました。

  • Blender: 3Dモデリングソフト。
  • FreeCAD: CADソフト。
  • MeshLab / 3D Viewer: 3Dモデルの確認・編集用。

Blenderのインストールウィザード画面。Blenderのロゴと「Blender Installer」のタイトルが表示され、インストール設定画面が開かれている。オープンソースの3Dモデリング・アニメーションソフトウェアとしてのBlenderをWindowsにセットアップするための画面で、インストール先の指定やコンポーネント選択などの設定項目が表示されている状態 FreeCADのインストールウィザード画面。FreeCADのロゴと「FreeCAD Setup」のタイトルが表示され、インストール設定画面が開かれている。オープンソースのパラメトリックCADソフトウェアとしてのFreeCADをWindowsにインストールするための画面で、インストールオプションや機能選択の設定項目が表示されている状態


4. ROS2との連携設定

今回のセットアップの核となる、ROS2との連携設定です。WSL上にインストールしたROS2とIsaac Simを接続しました。

1. WSL上へのROS2 Humbleのインストール

WSL (Ubuntu) を起動し、以下のコマンドを順に実行してROS2 Humble Desktop版をインストールしました。

# パッケージリストの更新とアップグレード
$ sudo apt update && sudo apt upgrade -y

# 必要なツールのインストールとリポジトリの追加
$ sudo apt install -y curl gnupg lsb-release software-properties-common
$ sudo add-apt-repository universe

# ロケール設定 (UTF-8)
$ sudo apt install locales
$ sudo locale-gen en_US en_US.UTF-8
$ sudo update-locale LC_ALL=en_US.UTF-8 LANG=en_US.UTF-8
$ export LANG=en_US.UTF-8

# ROS2リポジトリの追加とキーの登録
$ sudo curl -sSL https://raw.githubusercontent.com/ros/rosdistro/master/ros.asc | sudo apt-key add
$ echo "deb [arch=$(dpkg --print-architecture)] http://packages.ros.org/ros2/ubuntu $(lsb_release -cs) main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/ros2.list > /dev/null

# ROS2 Desktop版のインストール
$ sudo apt update
$ sudo apt install ros-humble-desktop

# 開発ツールのインストール
$ sudo apt install ros-dev-tools python3-colcon-common-extensions python3-argcomplete

# 環境設定スクリプトの読み込み設定
$ echo "source /opt/ros/humble/setup.bash" >> ~/.bashrc
$ source ~/.bashrc

インストール後、ros2 run demo_nodes_cpp talker を実行して、"Hello World"メッセージが流れることを確認しました。

WSL上のUbuntuターミナルでROS2デモノードを実行している画面。「ros2 run demo_nodes_cpp talker」コマンドを実行した結果、「Hello World」メッセージが連続して出力されている状態。ROS2 Humbleが正常にインストールされ、動作確認が完了したことを示すターミナル出力画面

2. Isaac Sim - ROS2ブリッジの設定

WindowsとWSL上のROS2を通信させるための設定を行いました。

まず、WSLとWindowsのIPアドレスをそれぞれ確認しました。

# WSLのIPアドレスを確認
$ hostname -I
# Windows側ではipconfigコマンドなどで確認

管理者権限のコマンドプロンプトで、ポートフォワーディングルールを追加しました。

# WSL_IPとWindows_IPは調べたアドレスに置き換えます
> netsh interface portproxy add v4tov4 listenport=7400 listenaddress=$Windows_IP connectport=7400 connectaddress=$WSL2_IP
> netsh interface portproxy add v4tov4 listenport=7410 listenaddress=$Windows_IP connectport=7410 connectaddress=$WSL2_IP
> netsh interface portproxy add v4tov4 listenport=9387 listenaddress=$Windows_IP connectport=9387 connectaddress=$WLS2_IP

Isaac Sim Selectorを起動し、「Bridge」タブで以下のように設定しました。

  • ROS Bridge Extension: isaacsim.ros2.bridge
  • Use Internal ROS2 Libraries: humble

Isaac Sim SelectorのBridge設定タブ画面。左側にタブメニューが表示されており「Bridge」タブが選択された状態。右側にはROS Bridge Extensionの設定項目が表示され、「isaacsim.ros2.bridge」が選択されている。また「Use Internal ROS2 Libraries」の項目で「humble」バージョンが指定されており、Isaac SimとROS2 Humbleとの連携設定が行われている状態

設定後、Isaac Simを起動し、Window > Extensionsからomni.isaac.ros2_bridgeが有効になっていることを確認しました。

Isaac SimのExtensions管理画面。「Window > Extensions」メニューから開かれたExtensionsウィンドウが表示されており、インストール済み拡張機能の一覧が表示されている。画面内で「omni.isaac.ros2_bridge」拡張機能が有効(Enabled)状態になっていることが確認でき、Isaac SimとROS2の連携が正常に設定されていることを示している状態

3. Rviz2のインストール

ROS2の統合3D可視化ツールであるRviz2を、WSL上で以下のコマンドを実行してインストールしました。

$ sudo apt update
$ sudo apt install ros-humble-rviz-ogre-vendor ros-humble-rviz-default-plugins
$ source /opt/ros/humble/setup.bash
$ rviz2

WSL上のUbuntuターミナルでrviz2を起動している画面。「rviz2」コマンドを実行した結果、ROS2の3D可視化ツールであるRviz2が正常に起動していることを示すターミナル出力が表示されている。ROS2 HumbleでのRviz2インストールと動作確認が完了したことを示している状態

4. MoveIt2のインストール (ソースビルド)

高度なモーションプランニングライブラリ「MoveIt2」は、バイナリインストールがうまくいかなかったので、ソースからビルドしてインストールしました。

# ワークスペースの作成と移動
$ mkdir -p ~/ws_moveit/src
$ cd ~/ws_moveit/src/

# チュートリアルと依存リポジトリのクローン
$ git clone https://github.com/moveit/moveit2_tutorials -b humble
$ vcs import < moveit2_tutorials/moveit2_tutorials.repos

# システム依存関係のインストール
$ sudo apt remove ros-humble-moveit* # 競合を避けるため既存バイナリを削除
$ cd ~/ws_moveit
$ rosdep install -r --from-paths src --ignore-src --rosdistro humble -y

# ビルド
$ colcon build --cmake-args -DCMAKE_BUILD_TYPE=Release

# DDSの設定
$ sudo apt install ros-humble-rmw-cyclonedds-cpp
$ echo 'export RMW_IMPLEMENTATION=rmw_cyclonedds_cpp' >> ~/.bashrc
$ source ~/.bashrc

# デモの実行
$ source install/setup.bash
$ ros2 launch moveit2_tutorials demo.launch.py

MoveIt2のデモが起動したことで、すべての連携設定が完了したことを確認しました。


5. まとめ

以上が、私が2025年12月に行ったNVIDIA Isaac Simの環境構築手順の記録です。

多くのステップがありましたが、一つ一つ着実に進めることで、無事にシミュレーション環境を構築することができました。この記録が、将来同じような環境構築を行う方の、何かの参考になれば幸いです。

【2025年12月版】NVIDIA Isaac Sim 環境構築の記録 (Issac Sim 5.1.0 + ROS2 w/ Win 11 Pro) | Shirokuma.online