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ねばりがない

Updated: 5/14/2022 Original: 4/4/2013

Osaka kastle

諦めは早いです。現実が見えていない理想主義者と思われがちです。とはいえ、むしろ究極的な現実主義者なのかもしれません。それも冷め過ぎの。例えばこの秀頼像のように。

これ以後、秀頼は全く自発的な発言をしていない。大坂城が滅亡に向かってまっさかさまに転げてゆく様を、極めて無関心にまた冷たく見守っていただけ、という感じがする。秀頼は決して暗愚な君主ではない。少なくとも頭脳だけはきわめて明敏だった。あるいは明敏すぎたのかもしれない。頭脳明敏なものは先の見通しがよくきく。或る程度、将来が読める。だから常人より早く諦めてしまう。愚者たちを説得し、正しい方向にむける努力を虚しいと思ってしまう。ねばりがない。秀頼の悲劇は正にそこにあったと思う。

影武者徳川家康〈下〉 (新潮文庫), 304頁