2026年9月7日
Ken Suzuki
ビジネス

AI時代になぜ人間のエンジニアが必要なのか

「AIに聞けば十分では」という素朴な疑問に、現場でAIを日常的に使うエンジニアとして答える。AIの回答をそのまま適用する怖さと、これからも人間にしか担えない2つの役割について。

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AI時代になぜ人間のエンジニアが必要なのか

AI時代になぜ人間のエンジニアが必要なのか

「AIに聞けば十分では」という疑問

AIに聞けば済むのではないか。人に頼むコストもかからないし、待ち時間もなく、すぐに答えが返ってくる。そう考える方が増えているのは自然なことだと思います。

最近は、指示するだけでWebサイトもできますし、ローカルのファイル操作関連もできます。動画も3Dモデリングも、もちろん画像も音楽も、以前「情報処理」と言われていたものはほぼ全てカバーできるようになりました。

私自身、日常的にAIを使っています。コードを書くときも、技術情報を調べるときも、最初に相談する相手はAIになりました。知識量もスピードも、率直に言って人間を上回る場面が増えています。

それでも、そのまま適用するのは危険

ただ、AIが出す答えをそのままコピペして現場に適用するのは、まだ危険と感じています。

AIは目の前の質問には的確に答えます。しかし、その答えが「今取り組んでいるシステム全体」の中でどう影響するか、「この現場特有の制約」と噛み合うかまでは、AI自身は把握していません。一般解として正しくても、個別の現場では前提が崩れていることは珍しくありません。

注意:AIの回答が技術的に間違っていなくても、文脈を欠いたまま適用すると、後から気づきにくい形で問題が積み上がります。

関係のないところに答えを見出せるか

そのように感じるのは、遠回りな学び方をしてきたからかもしれません。

私がIT関連の学習を本格的に始めたのは、学校のカリキュラムの中でした。最終的にソフトウェアを選択し研究して卒業しましたが、そこに至るまでにソフトウェア・ハードウェアはじめ、コンピューターに関連することは一通り全て学びました。

コンピューターが物理的になぜ動くのかを、物理現象として捉えるために電気、磁気、電磁波、光、エネルギー、熱、物質、原子、電子、結晶、プラズマなどなど学びました。

また、それらの物理現象を制御するソフトウェアを設計する前段階として、数理論理、集合論・関係代数、グラフ理論、オートマトン・形式言語、微分積分、確率・統計学、最適化理論、線形代数、三角関数、物理数学、数論などもやりました。

直接的な内容として、コンピュータそのものの歴史をその始まりから学びました(アセンブリ言語とか地味に楽しかった)し、さまざまなプログラミング言語での演習を行い、定石アルゴリズムも学びました。

一見コンピューターから遠く離れた、哲学・倫理学や、経済学、文学、外国語も必須でした。

でもそのおかげで、コンピューティングに関連する知識の全体像を見せてもらえたような気がしています。正直その時にはそれぞれを理解しようとするだけで精一杯でしたし、何のために学んでいるのかを考える暇もないほど詰め込みました。

実際、それぞれが有機的にどのように関連し合うかを考えられるようになってきたのは卒業してからしばらく経ってからでした。でも結果として、いろいろなパターンがわかるようになったように思います。一見コンピューティングと関係ない世界で成り立っている事象やパターンが、目の前で取り組んでいる問題に応用できるんじゃないかと考えられるようになりました。

もちろん、こうした視点は学校で学んだかどうかで決まるものではありません。現場での試行錯誤や、まったく別の分野からの越境でも同じように育つものだと思います。

そのようなダイナミックさ、起きている問題や課題をコンピューティングに必要な知識のちょっと外側まで遡って眺める視点。一見関係ないところからヒントを得られる直感力。こういうのは、これからもやはり人間の役割と考えています。

これからも人間にしか担えない、2つの役割

1. 全体を理解し、AIを使いこなして問題に対峙する人

特定の問題を解決するには、まずその問題が全体のどこに位置し、何が本当に必要とされているかを理解する必要があります。この理解があって初めて、AIに投げるべき質問、AIに任せてよい範囲、人間が判断すべき境界線が見えてきます。

AIを「答えを丸投げする相手」ではなく「使いこなす道具」として扱える人が、これからも必要です。

2. AIの解決策を評価し、現場にフィットするか見極める人

AIが提示した解決策が技術的に成立していても、それが「本当にこの現場にとって最適か」は別の問題です。運用コスト、保守性、チームのスキルセット、将来の拡張性——AIは把握しきれないこれらの要素を踏まえて評価できる人が必要です。

この評価を怠ると、動くには動くが誰も手を入れられないシステムや、短期的には早くても長期的にコストがかさむ選択が積み上がっていきます。

私が引き受けているポジション

私はNVIDIA Isaac Sim・ROS2を中心としたシミュレーション構築や、Webシステム・業務ツールの開発を担当していますが、どの案件でも意識しているのはこの2つの役割です。AIが出した提案をそのまま右から左へ流すのではなく、全体を理解した上でAIを活用し、その結果が現場に本当にフィットするかを評価する。

AIの進化が速い今だからこそ、そういう立ち位置の需要はむしろ増えていると感じています。

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